土地を総合的に判断してみることの事例として、北側道路のメリットを考えてみると理解できるかもしれません。
日当たりを第一に望む日本人は、南側道路の土地を特に好みます。それは需要と供給のバランスで、価格にも反映されていて、南側道路の土地は高く設定されています。
しかし、南側道路の価格が高くなるのは、土地の価格だけではありません。建設にともなう付帯工事費も高くなる傾向にあります。
たとえば給排水の工事費は、道路から引き込む管の長さによって工事費が変わります。北側道路の土地では、道路に近いところに建物があるのに対して、南側道路では道路から遠いとことに配置されます。しかも、建物の中でも水周りは北側に集中していることが多いものです。直結に近い工事ができる北側道路と、長い引き込みが必要となる南側道路の土地では設備の引きこみ工事費にも影響するのです。
また外構工事費でも差があります。北側道路では、うまく作れば植栽を植えるだけで済ませることができますが、南側道路は庭を作り込まなければなりません。これもコスト上の違いとなります。
さらに住宅のプランニングでも、北側に玄関がある方が効率は良くなります。南側からのアプローチでは、少なくとも南側の一画に玄関を作らなくてはなりません。全室が南面した家を作るのには、北側に玄関がある方が良いのです。また、廊下の面積も少なくて済みます。
その上、暮らしを考えても、北側道路には利点があります。南側道路では、せっかく南に窓があっても、人通りもあるのでレースのカーテンを閉めたまま暮らすことになります。しかし北側道路であれば窓を解放したままでも、南側隣地の家族が水廻りを利用している時の視線だけの問題です。これらのことから、北側道路を中心に探す人もいるほどです。
■おうちのはなし 031
土地のかしこい選び方―ここが、私の住むまち―
一般社団法人 住まい文化研究会 石川 新治